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米で超速宅配広がる 100兆円市場争奪

新型コロナウイルス禍で食料品宅配が急成長するなか、注文から15分以内と驚異的なスピードで配達する「超速宅配」が米国で広がっている。

ロシア発の超速デリバリー「Buyk(バイク)」は8月末、米ニューヨーク市でサービスを開始した。利用者がアプリを通じて注文してから15分以内に食品を依頼の場所に届ける。配達料は無料で最低購入金額の設定もなく、ペットボトルの水一本から気軽に注文できる。

迅速な宅配を支えるのが、ミニ倉庫のような店舗「ダークストア」だ。現在、ニューヨーク市内に20カ所ある。年内に米中西部シカゴにも進出し、全米でダークストア数を約100カ所に増やす計画だ。

注文が入ると、梱包を担う「ピッカー」が店内を回って商品を集め、大型リュックに詰めるまでを約2分半で完了する。荷物は「クーリエ」と呼ばれる配達員が担ぎ、電動自転車で家庭やオフィスに届ける。配達圏内は各ダークストアから半径約1.5~2キロメートルまで。16日、記者が実際にニューヨーク市で試すと、2分ほどで「梱包中」から「配達中」の表示に切り替わり、注文後13分で商品を受け取った。

注文から10分を切るサービスも登場した。10月下旬、カリフォルニア州ウエストハリウッド地区。警備会社で働くロナルド・サラスさんがスマートフォンのアプリをタップすると、ミニバンを改造した走る無人スーパー「ロボマート」がわずか2分で姿を表した。

到着後、再びアプリをタップすればドアが自動で開く。好きな商品を手に取るだけで買い物が済む。商品のタグと車内のセンサーで商品を識別し、料金は事前に登録した利用者のクレジットカードに請求する。手数料は一律2ドルで、最低注文金額の設定はない。サラスさんは「店に出向かず、短い休憩時間でも買い物できて便利」と話す。

パッキングの工程も無くし、店ごと消費者の元に届ける大胆なサービスで、到着までの時間は最短で2分弱、平均で9分におさめた。配車大手ウーバーやリフトに代表される「ライド・へイリング」(車の呼び寄せ)になぞらえ、2017年にロボマートを共同創業したアリ・アーメドCEOは「ストア・へイリング(店舗の呼び寄せ)」と表現する。

6月に運行を始めたスナックや飲料などの食料品を載せた「スナックカー」と、常備薬や洗剤などを集めた走る薬局が運行中だ。さらに生鮮品、カフェ、アイスクリーム、ファストフードを加えた計6種類から選べるようにする。

現在は運転席のみ有人だが、自動運転での運用も視野に実証実験を進めている。22年には小売店向けに、システム自体の外販も始める。アーメド氏は「小売業者の配送件数を最大6倍に伸ばす」と話す。

新型コロナ禍で生鮮食品の宅配サービスが浸透し、小売り大手ウォルマートやインターネット通販最大手アマゾン・ドット・コム、食品宅配大手インスタカートなど大手企業は即日宅配のサービスを相次いで打ち出した。より早さを求める声に応え、消費者の囲い込みへしのぎを削る。

ただ、配達時間は注文から1~2時間までが限度だった。人員や拠点数などの規模や展開地域の広さではなお大手に優位があるが、15分を切るサービスを掲げるスタートアップの参戦は業界のゲームチェンジャーになる可能性を秘める。

調査会社によると、21年に生鮮食品分野の市場規模は約1兆ドルとなる見通しだ。スーパーが主体の同市場に電子商取引(EC)が入り込む余地は大きいとみてベンチャーキャピタル(VC)マネーも大量に流入。ユニコーン(企業価値が10億ドルを超える未上場企業)も生まれている。経済の正常化で、巣ごもり消費の恩恵を受けてきた企業の選別が進むなか、パイの奪い合いが加速しそうだ。

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